近年はつみたてNISAの制度普及もあり、インデックス投資を行う人も大きく増加しました。
ただ、中長期スパンで投資を行っていると市場の暴落に巻き込まれることもあり、投資撤退を余儀なくされる人も多いようです。
そこで、インデックス投資を長期で実践するために絶対に読んでおきたい『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス著)を紹介させていただきます。
本書は1985年の初版以来、長期にわたって版を重ねたロングセラーで、たとえ話や豊富な事例を用いながら個人投資家が勝つために大切な考え方を教えてくれます。
本記事では『敗者のゲーム』の要点を簡潔にまとめておりますので、本書の内容が気になる方や長期にわたってインデックス投資を継続していきたいという方は参考にしてください。
この記事を書いた人
- AFP資格保有(FP実務経験あり)
- 過去に大手証券会社に勤務していた経験あり
- 金融系Webライター
投資は”敗者のゲーム”
本書は「敗者のゲーム」という非常に特徴的なタイトルが付けられています。
”敗者のゲーム”とは、ミスによって勝敗が決定するゲームのことを指します。
本書で説明されているテニスの例が非常に分かりやすいです。
どういうことかというと、プロのテニスプレイヤーは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失います。
プロのテニスのように勝つための1つ1つのプレーで結果が決まる試合を「勝者のゲーム」と呼び、アマチュアのテニスのようにミスによって決まる試合を「敗者のゲーム」と呼んでいるんですね。
私も高校時代はテニス部に所属していましたが、「敗者のゲーム」をやっていました…(反省)
そして投資に関していうと、ここ数十年で証券運用の世界で根本的な変化が起きた結果、「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」に変わってしまいました。
市場よりも高い成果を上げようと懸命に努力する機関投資家が多数現れ、市場を支配するようになった結果、大きな差がつかなくなったんですね。
数十年前のように機関投資家よりも個人投資家の取引が活発だった時代であれば、インターネット環境が整備されていなかったことも相まって情報で差別化することも可能でした。
ただ、現代はIT技術の進展によって投資に関する情報もタイムリーに入手しやすくなりましたし、個人投資家よりも機関投資家の取引が多くなっています。
プロのファンドマネージャーやアナリストは勤勉で優秀な方ばかりなので、上場している企業の株価も適切な価格がつけられるようになり【効率的市場】、付け入る隙は少ないです。
より効率的市場に近づいた現代では、プロの技術で市場に勝つことは難しくなり、他よりも失点をできるだけ少なくすることが重要になったのです。
そして、このような状況下で勝敗のカギを握るのがコストになります。
個々の株式を売買することによって手数料や税金がかかるので、儲けようとしてアクティブに売買すると「敗者のゲーム」になるわけです。
なので本書では、手数料が安くて広く分散されたインデックスファンドを推奨し、タイミングを計った売買をせずに慎重に考えて決めた投資方針に従うようにとアドバイスしています。
投資も同じであり、市場に勝とうとしないことが一番よい方法だ。すべての株式に投資するインデックス・ファンドを買って所有し続け、経済成長を待つことが、投資の成功法だ。個々の株を売買すると余計な経費や高い税金がかかり、テニスで言うアンフォーストエラー(単純ミス)につながる。
『敗者のゲーム』 チャールズ・エリス
「敗者のゲーム」に勝つ方法
では、投資という”敗者のゲーム”で勝つために何をすべきでしょうか。
1つの解として言えるのは、投資計画をしっかり考え、インデックスファンドを用いて長期的に投資をすることです。
アクティブ運用に勝つ唯一の方法は、他の投資家のミスに相手よりも素早く乗じることだ。したがって、ほとんどの人や運用機関は思うような結果を出せない。投資とは「敗者のゲーム」なのだ。
しかし、「敗者のゲーム」に勝つ方法もある。それは、時代遅れとなった従来のルールでプレイしないこと。
『敗者のゲーム』 チャールズ・エリス
幸いなことに個人投資家はプロの投資家と違って市場に勝つ必要がありません。
市場に勝つことに意識が向いてしまうと、自分にとって最適な長期投資の目的が疎かになってしまい、売買でミスしてしまう可能性があります。
その点インデックスファンドの長期保有であれば、コストが抑えられますし、判断ミスによる投資の失敗もしないで済みます。
ただし、極めて情緒的な環境ともいえる株式市場において、理性を保つことは容易ではありません。
なので、長期的な視点で資産配分を考えたり、自分の投資方針を定めることが重要になります。
投資で成功する秘訣は、投資計画をしっかり考え、それに沿って長期的に投資すること。ただそれだけだ。
『敗者のゲーム』 チャールズ・エリス
インデックス投資の良さ
「敗者のゲーム」と化した株式市場において、多くの方にとって最適な投資法がインデックス投資になります。
改めて本書を読んで感じたインデックス投資の良さを3つ紹介します。
- インデックス運用はアクティブ運用より成績がいい
- インデックス投資はコストが低い
- インデックス投資を行えば、長期の運用基本方針に集中できる
アクティブ運用より成績がいい
『敗者のゲーム(第8版)』では、アメリカの格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)の報告書で、S&P1500インデックス投資とアクティブ運用の成績を以下のように記しています。
それによると、毎年3分の1のアクティブ・マネジャーしかインデックスに勝てない。さらに、1年間勝ったアクティブ・マネジャーでも翌年も勝てている人は、ほとんどいない。15年間のプロのマネジャーの成績を見ると、90%はインデックス投資に及ばない。さらに、勝っているマネジャーの成績も時間とともに確実に低下する。このため、儲けようとしてアクティブに売買すると、「敗者のゲーム」となる。
『敗者のゲーム』チャールズ・エリス
私も証券会社に勤務していた経験があるので様々なアクティブファンドを見てきましたが、年単位で優秀なパフォーマンスを上げているものはあれど、長期的に成果を上げているアクティブファンドは確かに少ないです。
コストが低い
本書ではコストの重要性が説かれていますが、インデックスファンドはかなりコストが低いです。
優秀なインデックスファンドであれば、信託報酬が0.1%前後で幅広く分散投資することができます。
一方、アクティブファンドは信託報酬が1.5%前後が平均であり、このコストを加味した上で市場平均に勝つことは非常に難しくなっています。
運用成績はコントロールできませんが、コストは自分でコントロールが可能なので、できる限り下げたいですね。
長期の運用基本方針に集中できる
また、インデックス投資は基本的に売買することが少ないので、自分で定めた長期の運用基本方針に集中することができます。
市場に勝とうとして個別銘柄に手をつけると、激しく変動する相場に飲まれて感情的な影響を受けることもあります。
長期的な視点を見据えたインデックス投資であれば、感情に振り回されることなく、自分の投資スタイルを貫いたり、自分の生活や趣味を楽しむといった方向に時間を割けます。
相場に居続けることも非常に重要ですし、投資に感情を振り回されない生活を送ることも重要です。
多くの投資家にとって最も困難なのは、最適な投資方針を見出すことではなく、相場の高騰期も暴落期もブレずに適切な投資方針を貫くことだ。ディズレーリ(19世紀イギリスの名宰相)が言うように、常に目的達成を最優先すること。相場に振り回されずに長期運用を続けることが大切だ。
『敗者のゲーム』 チャールズ・エリス
まとめ:敗者のゲームで勝ち残るために
以上、『敗者のゲーム』の要点を簡潔にまとめました。
結局のところ、本書が私たち個人投資家に伝えたかったのは以下のシンプルな内容ではないかと思います。
長期的な視野で投資計画や投資方針を策定し、相場に振り回されず、実行が簡単なインデックスファンドを持ち続けること。
長期的に投資をしていると株式市場の暴落に巻き込まれることもありますが、市場に居続けることが非常に大切です。
大きな上げ相場がきた時に市場に参加していなければ、獲得できるリターンも少なくなりますし、そのタイミングを当てることは難しいです。
なので、自分のリスク許容度をしっかり見極めたうえで、長期的に続けられる資産運用を目指しましょう。
その最適な投資法としてインデックス投資が役立つはずです。
現実的な投資目標を決め、その目的を達成するための現実的な投資方針を選び、その方針をブレることなく辛抱強く貫く。そうすれば、私たちは本当の勝者のゲームができる。
『敗者のゲーム』 チャールズ・エリス
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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