日本の独立系運用会社で有名なのはひふみ投信を運用する「レオス・キャピタルワークス」やセゾン資産形成の達人ファンドを運用する「セゾン投信」だと思いますが、また他とは違った独特のコンセプトを持つ運用会社があるのはご存知でしょうか。
その独立系運用会社が、本記事で紹介する「鎌倉投信」です。
鎌倉投信は「いい会社」へ投資するというコンセプトを掲げた「結い2101」(ゆい にいいちぜろいち)というファンドを運用しています。
「結い2101」の純資産総額は500億円近くなり、鎌倉投信の口座開設数も2万人を超えるなど地道に評判も上昇傾向にあります。
鎌倉投信が手掛ける「結い2101」の評価や評判が気になっている方もいらっしゃると思うので、本記事では「結い2101」の基本情報から特徴、組入銘柄、運用成績、評判を紹介します。
これから「結い2101」への投資を検討しているという方や既に保有している方にも役立つ内容となっておりますのでぜひ最後までご覧ください。
- 「結い2101」は事業性と社会性を兼ね備えた「いい会社」に投資するファンド
- 現金比率が非常に高く、リスクを抑えた運用に重きを置くファンド
- リスクを抑えた運用を行なっている結果、リターンも低い
結い2101の基本情報
まずは「結い2101」の基本情報をまとめました。
ファンド名 | 結い2101 |
運用会社 | 鎌倉投信 |
設定日 | 2010年3月29日 |
決算日 | 毎年7月19日 |
購入時手数料 | なし |
信託報酬 | 1.10% |
実質コスト | 1.128% |
信託財産留保額 | なし |
つみたてNISA | 対応 |
備考 |
「結い2101」は独立系資産運用会社の鎌倉投信が運用を手掛けています。
多くの金融機関が本社を東京に構える中、鎌倉投信の本社はその名のとおり鎌倉にあり、築80年以上の古民家を活用しているようです。
鎌倉市の古民家で一軒家のオフィスといった型にハマらない選択をしているのも非常に興味深いですね。
「結い2101」の設定日は2010年3月29日で、決算日は毎年7月19日となっています。
「結い2101」は鎌倉投信のみの取り扱いとなっており、今後も他の証券会社や銀行での販売委託の予定もないとのことです。
つまり、「結い2101」に投資をするのであれば、鎌倉投信での口座開設が必要となります。
購入時手数料と信託財産留保額(解約時に差し引かれるコスト)はなく、信託報酬は1.10%と設定されています。
売買委託手数料や有価証券取引税、その他費用を加味した実質コストは1.128%と少し高い点に注意が必要です。
結い2101の特徴
「結い2101」の主な特徴は以下の3つです。
- 「いい会社」に投資する
- 中小型株の投資比率が約9割
- 現金比率が非常に高い
①「いい会社」に投資する
「結い2101」の最大の特徴とも言えるのが、これからの日本に本当に必要とされる「いい会社」へ投資をするという運用理念にあります。
「いい会社」という言葉はかなり抽象度が高いですが、資産性の長期的な成長と、社会の持続的発展の両立のために、事業性と社会性を兼ね備えた会社のことだと思ってください。
鎌倉投信は以下の図のように、投資で得られる果実(リターン)を、投資家の「資産形成」「社会形成」「こころの形成(満足度)」が掛け合わさったものだと捉えています。
投資信託はどうしてもファンドの運用成績面に光が当てられますが、鎌倉投信は投資家の経済的利益の追求だけではなく、社会的な利益を増やすことにも強い意識が向けられています。
投資を通じて日本の良さを実感できるように、「人・共生・匠」という運用コンセプトも掲げています。
- 人:優れた企業文化を持ち、人財を活かす企業
- 共生:循環型社会を創る企業
- 匠:日本の匠な技術、感動的なサービスを提供する企業
これらのテーマに合致した企業に長期投資することで、投資リターンの獲得と社会の発展につなげていくわけですね。
具体的な組入銘柄に関しては、後ほど紹介させていただきます。
②中小型株の投資比率が約9割
「結い2101」の投資先を見てみると、約9割が中小型株式となっています。
規模別構成比の内訳は時価総額が1000億円未満の小型株に59.7%、1000億円以上5000億円未満の中型株に30.6%の割合となっています。
特に小型株に関しては、アナリストの評価対象から外れている企業も多く、成長余地がまだ大きいため、将来株価が大化けする可能性を秘めているのが魅力です。
「結い2101」は小型株への投資比率が大きくなっていますが、それぞれの銘柄については低比率で分散投資されています。
③現金比率が非常に高い
これもまた、他のファンドではあまり見られない「結い2101」の特徴ですが、現金比率が非常に高いです。
2021年11月の月次レポートをみると、株式が64.2%、債券が2.2%、現金が33.6%の資産構成比となっています。
投資家の立場からすると、余裕資金を運用するためにファンドにお金を預けているのに、ファンドの中身の3割は現金のままということで賛否両論あると思います。
鎌倉投信は以下の2つの理由から現金比率を戦略的に高めていると述べています。
- ファンドの基準価額の価格変動を目標の年率10%以内に抑えるため
- 流動性の低い企業への投資に備えるため
後に紹介する「結い2101」の運用成績を確認していただければ明白なんですが、かなりリスク(値動き)を抑えた運用に重きを置いています。
実際に鎌倉投信のHPでも「ゆっくりと安定した運用を目指しています」と表記されています。
株式の価格が大きくブレる局面では現金を多めに持ち、逆に価格のブレが小さい局面では株式を多めに保有し、価格変動リスクを調整しているんですね。
結い2101の組入銘柄
「結い2101」の2021年11月末時点の組入上位10銘柄がこちらです↓
銘柄 | コード | テーマ | 組入比率 | |
1 | デジタルハーツホールディングス | 3676 | 匠 | 1.30% |
2 | ライフネット生命 | 7157 | 人 | 1.30% |
3 | LITALICO | 7366 | 人 | 1.30% |
4 | 浜松ホトニクス | 6965 | 匠 | 1.30% |
5 | シマノ | 7309 | 匠 | 1.30% |
6 | ピジョン | 7956 | 人 | 1.30% |
7 | 亀田製菓 | 2220 | 共生 | 1.30% |
8 | ニッポン高度紙工業 | 3891 | 匠 | 1.30% |
9 | 前田工繊 | 7821 | 共生 | 1.30% |
10 | タムロン | 7740 | 匠 | 1.30% |
既に説明したように、中小型株式の投資割合が多いので、皆さんも知らない銘柄があるのではないでしょうか。
総組入銘柄数は61銘柄となっており、ほとんどが少ない比率で分散投資されていることが伺えます。
決算期ごとの運用成績
「結い2101」の4期から12期における直近9年間の基準価額と純資産総額の推移をまとめました。
基準価額 | 期中騰落率 | 純資産総額(百万円) | |
2013/7/19(4期) | 13,738 | 33.30% | 4,793 |
2014/7/22(5期) | 14,561 | 6.00% | 10,174 |
2015/7/21(6期) | 16,821 | 15.50% | 18,431 |
2016/7/19(7期) | 15,522 | -7.70% | 23,892 |
2017/7/19(8期) | 17,684 | 13.90% | 28,571 |
2018/7/19(9期) | 19,368 | 9.50% | 37,164 |
2019/7/19(10期) | 18,292 | -5.60% | 38,359 |
2020/7/20(11期) | 19,091 | 4.40% | 42,055 |
2021/7/19(12期) | 21,123 | 10.60% | 48,576 |
基準価額と純資産総額はともに着実に増加していますね。
「結い2101」は銀行や証券会社での販売はなく、鎌倉投信のみの直販で純資産総額が485億円まで到達しているのはすごいです。
続いて「結い2101」の1年、3年、5年、10年といった期間別のトータルリターン、標準偏差、シャープレシオをまとめました。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | |
トータルリターン | -0.93% | 2.51% | 4.99% | 7.75% |
カテゴリー順位 | 74位(90本中) | 75位(83本中) | 67位(67本中) | 43位(43本中) |
標準偏差 | 6.74 | 10.57 | 8.99 | 9.33 |
カテゴリー順位 | 2位(90本中) | 2位(83本中) | 1位(67本中) | 1位(43本中) |
シャープレシオ | -0.14 | 0.24 | 0.56 | 0.83 |
カテゴリー順位 | 76位(90本中) | 66位(83本中) | 49位(67本中) | 27位(43本中) |
この表をみると、「結い2101」の特徴が顕著に表れていることが分かります。
「結い2101」は現金比率が非常に高く、リスクを抑えた運用に重きを置いていましたが、標準偏差(リスク)は国内中型グロースというカテゴリー内で圧倒的に低くなっています。
一方で、現金比率が高いと相場の上昇局面であまりリターンが得られないため、トータルリターンは相対的にかなり悪い成績となっています。
運用の効率性を示すシャープレシオは優秀なファンドの目安とされる1を割っており、モーニングスターから付与されるレーティングも☆3となっています。
リスクを抑えた運用はしっかりとできていますが、リスクを抑えているが故にリターンもしょぼくなってしまっているというのが現状です。
【評判】月次の資金流出入の推移
「結い2101」の評判を客観的に知るために月次の資金流出入額のグラフを見ていきましょう。
ファンドの資金が流入しているということは「結い2101」を購入している人が多くなっているということですし、逆に資金が流出している場合は運用成績に満足できずに解約した、もしくは利益確定等で売りが出ているという風に読み取れます。
以下が2021年11月30日時点の「結い2101」の月次資金流出入額のグラフです。
ところどころ大きく資金流出に転じている局面は見られますが、概ね資金流入が継続していることが読み取れます。
鎌倉投信の口座開設数も順調に伸びており、「結い2101」に投資をしている人も着実に増えていることから評判も悪くなさそうです。
「結い2101」はリターンは良くないものの、しっかりとリスクを抑えた運用ができており、社会性も重視しているので鎌倉投信の運用理念に共感している人からの支持が厚いファンドだと思います。
まとめ:「いい会社」へ投資するファンド
以上、「結い2101」の基本情報から特徴、組入銘柄、決算期ごとの運用成績、評判について紹介させていただきました。
改めてまとめると、「結い2101」は事業性と社会性を兼ね備えた「いい会社」に投資を行い、投資家の資産形成と社会的な利益の追求に意識が向いているファンドです。
また、現金比率が非常に高く、リスク(標準偏差)を確認するとしっかりとリスクを抑えることに重きを置いた運用ができていることが分かります。
リスクを抑えている一方で、リターンが相対的にかなり悪くなっているのでその点に注意は必要です。
短期的な値上がりを追求している人には「結い2101」は全く向いていないファンドです。
ちょっと特殊な立ち位置ではありますが、リスクを抑える運用をしながら、これからの日本の社会を良くしていけるような「いい会社」に投資をすることで日本の未来に貢献したいといった方には「結い2101」はおすすめできます。
「結い2101」は銀行や証券会社での販売はなく、鎌倉投信のみの直販となっていますが、その分鎌倉投信からの情報提供やセミナーは非常に手厚くなっています。
なので、運用会社からの情報をしっかり受け取りながら、長期的に付き合っていきたいという方にもおすすめできる投資信託です。
「結い2101」に関心を持たれている方の参考に少しでもなれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
【免責事項】
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